結論からいうと、両者の差が最も大きいのは失業保険(雇用保険の基本手当)です。会社都合なら7日間の待期のあとすぐ支給が始まり、給付日数も最大330日。自己都合は待期7日に加えて原則1ヶ月の給付制限(2025年4月1日以降の離職。それ以前は原則2ヶ月)があり、給付日数は最大150日にとどまります。さらに会社都合(非自発的離職)なら国民健康保険料の軽減も受けられます。一方、退職金の減額の有無は法律ではなく会社の退職金規程次第です。以下で順に見ていきます。
そもそも何が「自己都合」で何が「会社都合」か
自己都合退職は、転職・独立・結婚・家庭の事情など、労働者側の意思で退職するケースです。雇用保険では原則「一般受給資格者」に区分されます。
会社都合退職は、倒産・事業所の廃止・人員整理(リストラ)・解雇(懲戒解雇を除く)・退職勧奨など、会社側の事情による離職です。雇用保険では「特定受給資格者」として手厚く扱われます。
また、本人の意思による退職でも、病気・けが・家族の介護・配偶者の転勤への同行などやむを得ない事情があれば「特定理由離職者」となり、給付制限なしなど会社都合に近い扱いを受けられます。雇用契約の更新を希望したのに更新されなかった有期契約労働者もこれに含まれます。
違いの早わかり比較表
| 項目 | 自己都合退職(一般受給資格者) | 会社都合退職(特定受給資格者) |
|---|---|---|
| 受給要件(被保険者期間) | 離職前2年間に通算12ヶ月以上 | 離職前1年間に通算6ヶ月以上 |
| 支給開始まで | 待期7日+給付制限原則1ヶ月(2026年7月時点) | 待期7日のみ(給付制限なし) |
| 所定給付日数 | 90〜150日 | 90〜330日 |
| 国民健康保険料の軽減 | 原則なし | あり(前年給与所得を30/100として計算) |
| 退職金 | 法律上の差はなし。会社の退職金規程で自己都合は支給率が低く設定されている例が多い | |
失業保険への影響①:もらい始める時期
ハローワークで求職申込みをすると、離職理由を問わずまず7日間の待期期間があります。会社都合(特定受給資格者・特定理由離職者)はこの待期が明ければ支給対象期間が始まります。
自己都合の場合は待期のあとに給付制限期間が付きます。ここが2025年4月に大きく変わったポイントです。
- 2025年4月1日以降の離職:給付制限は原則1ヶ月(それまでは原則2ヶ月)。
- 5年以内に3回以上自己都合退職を繰り返している場合は、給付制限が3ヶ月になります。
- 離職期間中または離職日前1年以内に、雇用の安定・再就職に役立つ教育訓練(2025年4月1日以降に受講開始したもの)を受けた場合は、給付制限が解除され待期7日後から受給できます。
実際に初回の振込があるのは、認定日のスケジュールの関係で申請から約2ヶ月後(自己都合の場合)が目安です。「自分はいつから・いくらもらえるのか」は失業保険シミュレーターで年齢・給与・離職理由を入れて確認できます。
失業保険への影響②:所定給付日数
もらえる日数の差はさらに大きく、家計への影響という意味ではこちらが本命です。
自己都合退職(一般受給資格者)の場合
| 被保険者期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|
| 全年齢共通 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職(特定受給資格者)の場合
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1〜5年未満 | 5〜10年未満 | 10〜20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | — |
| 30〜34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35〜44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45〜59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60〜64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
※2026年7月時点の制度に基づく。特定理由離職者のうち有期契約の雇止め等による離職者は、所定給付日数について特定受給資格者と同じ扱いになる場合があります。
たとえば45歳・勤続22年で離職した場合、自己都合なら150日、会社都合なら330日。基本手当日額が6,000円なら受給総額の差は約108万円にもなります。
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退職金は「会社の規程次第」
退職金の額に法律上のルールはなく、各社の退職金規程で決まります。多くの会社では自己都合退職の支給率を会社都合より低く(たとえば同じ勤続年数で7〜9割程度に)設定しています。逆に懲戒解雇の場合は減額・不支給の規定があるのが一般的です。まずは自社の就業規則・退職金規程を確認しましょう。
なお退職金にかかる税金(退職所得控除)は勤続年数で決まり、自己都合か会社都合かで差はありません。手取り額は退職金手取り計算で試算できます。
国民健康保険料の軽減(会社都合のみ)
倒産・解雇などによる非自発的離職者(特定受給資格者・特定理由離職者)は、国民健康保険料の計算上前年の給与所得を30/100とみなして算定される軽減措置を受けられます(2026年7月時点)。対象期間は離職日の翌日の属する月から翌年度末までで、市区町村の窓口での申請が必要です。自己都合退職(一般受給資格者)はこの軽減の対象外です。
「本当は会社都合なのに自己都合にされた」ときの対処
離職理由は会社が作成する離職票に記載されますが、最終的に判定するのはハローワークです。次の点を押さえておきましょう。
- 退職勧奨に応じた退職、長時間残業(目安として離職前に月45時間超の残業が3ヶ月連続など)や賃金の大幅な減少・不払いを理由とする退職は、形式上「自己都合」でも特定受給資格者と判定される場合があります。
- 離職票の離職理由に異議があるときは、離職票の本人記入欄でその旨を示し、ハローワークに申し出ます。
- 解雇通知書、給与明細、タイムカードの控えなど証拠となる資料は退職前から確保しておくと判定がスムーズです。
安易に「一身上の都合」と退職届に書いてしまうと自己都合の証拠として扱われかねません。会社側の事情で辞めるなら、退職届の文言にも注意が必要です。
よくある質問
自己都合退職でも給付制限なしで失業保険をもらえるケースはありますか?
あります。病気・けが、家族の介護、配偶者の転勤への同行など「正当な理由」がある自己都合退職は「特定理由離職者」と判定され、給付制限なしで受給できます。また2025年4月以降は、離職期間中または離職日前1年以内に雇用の安定に資する教育訓練を受講した場合も、給付制限が解除されます。
退職勧奨に応じた場合は自己都合と会社都合のどちらになりますか?
会社から退職を持ちかけられてそれに応じた「退職勧奨」による離職は、原則として会社都合(特定受給資格者)として扱われます。ただし離職票の離職理由欄が「自己都合」とされてしまうケースもあるため、離職票の記載内容を必ず確認しましょう。
離職票の離職理由に納得できない場合はどうすればいいですか?
ハローワークで求職申込みをする際に異議を申し立てられます。離職票には本人が離職理由に異議があるかを記入する欄があり、ハローワークが会社側・本人側双方の主張や資料(解雇通知、残業記録、賃金台帳など)を確認して最終的に判定します。証拠になる資料は退職前から保管しておくのが安全です。
会社都合退職だと転職で不利になりますか?
倒産や人員整理(リストラ)など本人に責任のない会社都合退職であれば、面接で理由を説明できれば大きな不利にはなりにくいとされています。履歴書には一般に「会社都合により退職」と記載すれば足ります。一方、懲戒解雇は事情が異なるため注意が必要です。
※本記事は2026年7月時点の制度に基づく一般的な情報提供であり、個別のケースについては管轄のハローワークや市区町村の窓口にご確認ください。